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<最新刊:2023年11月16日発刊>
今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい
接着の本<新版>
界面化学や高分子化学をベースにした入門書が多い中で、実際のユーザーとなる機械・生産技術者の視点で接着を用いた組立を行なうために必要な基礎知識を紹介する。
化学に詳しくない人にもわかりやすく読め、実用的な観点から接着の基本が身につく。利点と欠点、原理・原則を知ることで「信頼性・品質に優れた接着」を実現することができる。シリーズ恒例で接着のメカニズムや働き、仕組み、作法をイラストで“超” やさしく図解した。
著者:原賀 康介
日刊工業新聞社
体裁:A5判、並製、160頁
価格:本体1,800円+税
この本を手にされた方で、これまでに自分で接着をしたことがないという方はおそらくおられないはずです。接着剤や粘着テープなどは街のあちこちで容易に手に入ります。接着というのはそれほど身近な接合技術です。それだけに、接着したものが壊れたという経験も多いと思います。
各種の産業分野においてもしかりです。現在、接着は、異種材料でも容易に接合が出来るという利便性から、ものづくりに必要不可欠な技術となっています。その反面、化学的な要素が多く出来映えを可視化しにくい、完成後に強度検査が出来ない、設計基準が不明確など多くの課題も有しています。また、接着に関する教育は、大学でもあまり行われていないため、接着の専門家を擁する企業は多くありません。そのため、接着に関係する不具合は多く発生しています。
そこで、本書では、工業製品の製造における接着を対象として、「見よう見まねの接着」から脱却して「信頼性・品質に優れた接着」を行うために、知っておかねばならないポイントややらなければならないこと、やってはいけないことなどについて、接着に詳しくない方々にもわかりやすくまとめました。
どんな技術にも良い面と悪い面の両面があります。良い面ばかりが強調されて悪い面がないがしろにされると、必ずや大きな社会的な問題や重大な事故につながります。接着もしかりです。ですから、本書では、「接着」の長所と利点、欠点と課題、メカニズムを正しく理解し、信頼性のある使える接合技術に仕上げるための指南書とすることを目指しました。
今回、実際に接着を用いて組立を行うために必要な基礎知識について述べ、「新しい接着の在り方と作法」をトコトンやさしく書いて欲しいとの依頼を受けました。気軽に引き受けたものの、書き始めて、あらためて接着という技術をわかりやすくやさしく説明することの難しさを実感しました。何とか、必要なことをできるだけわかりやすく書いたつもりです。本書をお読みいただいて、接着の利点と欠点・課題の両面と本質を十分に認識していただき、信頼性・品質に優れた接着の一助としていただければ幸いです。
各章の後ろのコラムには、筆者がメインとなって開発した接着の適用事例を示しました。参考になれば幸いです。
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【目次詳細】
第1章 接着とは
1 天然系接着剤から合成系接着剤へ
接着の歴史と用途
2 接着は「接着剤」という介在物による接合
『接着』の定義
3 接着剤は液体である
接着するときの接着剤の性状
4 分子の電気的な引き合いによる結合
接着の原理①分子間力による結合
5 分子の絡み合いと機械的結合
接着の原理②その他の結合
6 異種材料でも容易に接合できる
接着の利点
7 薄板・軽量化、適材適所の材料選定
接着で得られる効果
8 簡単に剥がれない、やり直しが難しい
接着の欠点
9 接着と他の接合の組合せで欠点を補完
複合接着接合法の活用
第2章 接着剤の固まり方
10 二液の混合や一液加熱で硬化する接着剤
エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系接着剤
11 二液の接触で硬化する接着剤
第二世代アクリル系接着剤(SGA)
12 空気中の水分で硬化する接着剤
シリコーンRTV、変成シリコーン系、ウレタン系接着剤
13 接着面の水分で硬化する接着剤
瞬間接着剤(シアノアクリレート系接着剤)
14 酸素遮断と活性材料接触で硬化する接着剤
嫌気性接着剤
15 光で硬化する接着剤
紫外線硬化型接着剤と可視光硬化型接着剤
16 その他の固化方式の接着剤
溶媒乾燥型、ホットメルト(HM)型、固化しない粘着型)
第3章 固まった接着剤の物性と接着特性
17 接着剤は硬化時に収縮して応力が生じる
硬化収縮による内部応力〈硬化収縮応力〉
18 接着剤と被着材の膨張係数差で生じる応力
加熱硬化後の冷却過程で生じる内部応力〈熱収縮応力〉
19 接着剤は弾性体と粘性体の性質を持つ物質
接着剤は「粘弾性体」
20 粘弾性体の性質
粘弾性体の速度依存性、クリープ特性、応力緩和特性
21 接着部に加わる力の種類と代表的な評価方法
接着強さの評価方法、引張せん断試験とはく離試験
22 接着強さは接着剤の硬さや伸びで変化する
接着剤の硬さ・伸びと接着強さの関係
23 接着強さは温度で変化する
接着剤のガラス転移温度(Tg)と接着強さの関係
24 硬い接着剤では接着面全体に均一な力は加わらない
硬い接着剤での応力集中
25 柔よく剛を制す
強靱で軟らかい接着剤では応力集中は少ない
第4章 良好な接着を行うための基本
26 目的は信頼性・品質に優れた接着の実施
高信頼性・高品質接着と特殊工程の技術
27 接着面での破壊は禁物
凝集破壊と凝集破壊率
28 接着界面での破壊(界面破壊)の危険性
小さな力でも起こる内部破壊
29 バラツキをどの程度に抑えればよいか
バラツキの指標『変動係数』
30 接着部のアキレス腱はどこか
接着面端部の界面は最もやられやすい
31 界面破壊を避けて凝集破壊にするには
接着面の表面張力を高くして極性を上げる
32 接着しにくい材料
被着材の素材の性質と接着性
33 接着性を上げるための表面処理
面を粗らす、汚れを落とす、接着しやすい皮膜をつくる
34 接着しやすい表面に変える表面改質
ドライ処理による表面改質
35 接着剤と被着材表面をつなぐ中間層
カップリング剤・プライマー・コーティング材の活用
36 接着剤と接着面の分子の距離を縮める
分子間の距離が離れると分子間力は弱くなる
第5章 接着部の劣化について知る
37 接着部の劣化因子と劣化箇所
接着剤自体か界面か被着材表面かを見極める
38 熱劣化の3つのモード
酸素による接着剤の分解、界面結合の切断、被着材の変質
39 水分劣化の4つのモード
界面結合の破壊、被着材表面の変質、加水分解、吸水膨潤
40 耐水性向上のための接着部の寸法設計
水分劣化への接着部の形状・寸法の影響
41 樹脂は水分を吸って変形する
吸水膨潤による劣化
42 接着部に加わる継続荷重は劣化の大敵
クリープによる劣化
43 接着部に加わる繰返し力による劣化
繰返し疲労耐久性に着目しよう
44 疲労耐久性の向上策
複合接着接合法の活用
45 環境と応力の複合は劣化を促進する
環境と応力の複合劣化
46 高温・低温の繰返しによる劣化
ヒートサイクルとヒートショックの違い
第6章 設計・施工時に留意すべきこと
47 接着層の厚さで強度や壊れやすさは変化する
接着層の厚さと強度、変形追従性
48 接着層の厚さは出来映え次第ではいけない
接着層の厚さ基準での設計・施工
49 接着層厚さの調整方法
スペーサーによる厚さコントロール
50 異種材の嵌合接着での接着層厚さ方向拘束①
線膨張係数が軸部品>穴部品の場合
51 異種材の嵌合接着での接着層厚さ方向拘束②
線膨張係数が軸部品<穴部品の場合
52 接着部の破断強さはどのくらいあればよいか
室温初期の平均破断強さは加わる最大力の何倍必要か
53 接着剤のはみ出し部は除去すべきか
接着剤はみ出し部の効果と課題
54 塗装に適した素材は接着にも適しているか
素材(被着材)の選定
55 接着剤の垂れや糸切れ性は粘度でわかるか
接着剤の粘度と揺変性
56 気泡を入れない接着剤の塗布方法
空気の逃げ道を考慮した塗布方法
57 加圧は最小限の力で1回で押し切る
加圧力の大きさ、二度加圧の禁止
58 加熱硬化はゆっくり昇温、ゆっくり冷却
急速硬化の課題と対策
第7章 信頼性を確保するポイント
59 品質や生産性の良し悪しは設計で決まる
開発段階でのつくり込みの技術『接着設計技術』
60 接着の品質確保は生産工程での管理で決まる
適切な接着組立を行うための『接着生産技術』
61 破壊時の安全性確保は製造者の社会的責任
破壊に対する冗長性の確保
62 破壊試験における注意点
強度よりも凝集破壊率を重視する
63 接着剤は要求機能・特性の観点で選ぶ
接着剤の選び方
64 見よう見まねでの作業は不良品の山をつくる
マニュアルの整備と教育訓練
65 出荷後に不良が生じたときの原因究明
手順とポイント
66 接着の信頼性・品質をどう担保するか
信頼性・品質は不断の努力で築くもの
【コラム】
・エレベーターの意匠構造パネルの補強材接合
・パラボラ電波望遠鏡の高精度反射面
・金属筐体の組立(接着とリベットの併用接合)
・車輌空調装置枠体(接着とスポット溶接の併用接合)
・人工衛星の太陽電池パネル組立
・モーターの永久磁石接着
・熱交換器の冷媒配管の接合・シール
【参考文献】
【索引】
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株式会社 原賀接着技術コンサルタント